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第14回 人骨問題を考える連続学習会の報告

5月10日、第14回 人骨問題を考える連続学習会をオンラインで開催いたしました。参加人数は70人ほどでした。

今回のテーマは、「アイヌ遺骨問題の現在」で、出原昌志さん(チャランケの会/アイヌ・ラマット実行委員会)と、広瀬健一郎さん(鹿児島純心女子大学)にお話を伺いました。

1880年代から1970年代まで、北海道大学、東京大学、京都大学他の人類学者たちがアイヌ墳墓から夥しい数の遺骨を盗掘しました。「先住民族の権利に関する国連宣言」を契機とするアイヌ政策の見直しの中で、アイヌ遺骨問題が政府案件となり、「チャランケの会」では政府に対して遺骨の返還・再埋葬を要求してチャランケを重ねてきました。文科省と大学の間で責任の所在を擦り付け合うので、一堂に会して意見を交換したい、というのは、もっともなことです。今回、質疑応答でのやり取りの中でも、研究者と当事者団体との立場の違いが浮き彫りとなり、緊張感の高い場面もありましたが、そうした立場の違いを踏まえたうえで、膝を突き合わせて話し合う場が、もっと必要だとも感じました。そのうえで、「盗掘したり、同意なく持ち出した人の骨を、研究に使っていいわけがない」「アイヌの自決権が優先されるべき」というのは、まったくもってその通りであると思いました。広瀬さんの紹介するカナダの事例では、謝罪や返還は議論の余地がなくなされるべきものとされていて、その手法が当事者団体を交えて真剣に議論されている局面であるということでした。


以下は、参加者からの感想です。(掲載の了承があるものだけ載せています)

・大変参考になりました。より多くの人に関心を持ってもらいたいです。【五十嵐】

・たいへん勉強になりました。藤原先生が言及されたように、沖縄では戦没者の遺骨が混じった沖縄本島南部で採掘された土砂を辺野古新基地の埋め立てに用いることへの抗議運動が行われ、「骨」の問題がとてもホットです。それを思いながら視聴しました。ありがとうございました。

・日本での議論とカナダでの議論を比較することができ興味深かったです。

・カナダの遺骨返還問題の先住民族に配慮された対応が日本と比べて大変進んでいると思いました。アイヌの遺骨返還交渉の歴史を感じさせる重厚な取り組みでした。琉球民族遺骨返還運動でも見習いたいと思います。【ニライ・カナイぬ会、玉城(たまぐしく)毅】

・カナダの事例と対照的な日本の現状に深い失望を覚えるとともに、当事者たちと、政治家/官僚/一部の学識者の間にある認識の時間的・空間的・精神的な隔たりが鮮明に浮かび上がって見えました。
数千年前の死者を弔う世界と、遺骨を研究や政治の問題としてとらえる世界があり、その異次元の世界が接点や共通の言葉をもつ方法が果たしてあるだろうか?
あるのだとすれば、それを仲介する手段はなにか、一表現者としてそのようなことを自問しながら拝聴しました。貴重な会に参加することができ幸運でした。【新井卓】

・アイヌに本土の葬祭文化を押しつけて遺骨返還の条件としているというのはまったくの盲点でした。【北澤尚子】

感想は以上です。

また、出原さんから案内をいただいた、巡回展「先住民族アイヌは、いま」の告知チラシをこちらからダウンロードできます。

同ページに掲載の、琉球民族遺骨返還訴訟支援集会「未来のGOING HOMEを求めて」は緊急事態宣言で会場が使用できないため、オンライン開催のみとなったようです。これらの企画については、各主催にお問い合わせください。




by honetori | 2021-05-11 14:05 | 学習会報告

公共機関所蔵の人骨問題を考える連続公開学習会です。


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